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アイテム詳細
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カスタマーレビュー ![]()
読み物としては素晴らしい
(2009-01-01)
まだ何も知らなかった頃は、グールドの博識さと自然の多様性にただただ感動しながら読んでいた。久々に読み返してみて、自然の多様性を改めてかみしめるとともに、細部の議論のずさんさが垣間見えて少し寂しくなった。
印象深かったのはアンコウの消え去りそうなくらい小さなオスの話、カツオドリの子殺し、多胚生殖する寄生バチの他、ルイ・アガシやニコライ・ヴィヴァロフに関するうんちく満載のエッセイだ。
グールドは本書のあちこちで適応万能論者を批判するが、今から見れば全く「わら人形」なのが残念だ。「適応万能論者は検証しない」と批判し、グールドが(検証せずに)適応以外の要因を思索している間に、反対者たちはせっせと仮説立論/検証を行い多くの発見を成し遂げてしまった。偶然性にしても、適応主義者は偶然を認めると同時に「偶然ではない部分にはどのような力が働いているか」を明らかにしようとしているのだ。その議論に偶然性を持ち出しても的外れも良いところだ。
本書は進化論の入門書としてはかなり欠陥がある。しかし博物学と科学史のカタログとしては大変優れている。
観察こそが科学である
(2008-11-24)
有名な進化学者グールドの手による科学エッセイ。
私は専門外なので学問的な評価は良くわからない。論を進める上で必須ではあろうが、専門用語や論の展開が今ひとつわからないところもあったのも事実である。ただ、エッセイとしては面白く読めた。文章に冗長なところがあるが、門外漢である自分も進化という事象について興味を持つことができた。
本書を読んで思ったのは進化とは教科書のように単純ではないというということだ。自然には理解に苦しむような不可思議な現象がある。減少を丹念に観察すれば見える事実もあれば、やはりよくわからないこともある。具体的な事象を題材に、突然変異と自然淘汰で説明できるわけではない自然の精妙さを初学者にもわかりやすく紹介する文章に引き込まれ、読み進めてしまった。
科学者の人間くさい側面も興味深いものであった。科学者といえども人間である。人間は時代に拘束されるものである。偉大な科学者と言えでもその時代の人間であるからにはその時代の常識や限界にとらわれてしまう面もある。反面、その偉大な知性で時代の限界を突破するのであることも事実である。著者が取り上げる過去の偉大な科学者たちに共通する点はいずれも偉大な観察者であったことである。著者のスタンスと共通するが徹底的な観察こそが自然を解き明かす王道ということなのであろう。
本書の内容とは直接関係しないが、日本ではグールドのような面白い科学エッセイを書く科学者がいない。というか、実際はいることはいるのだが話題にならないし、注目されない。
いろいろ読んでみると良質の科学エッセイもあるのだが、殆ど知られていない。もったいないことだ。
この辺りはエッセイの質の問題よりも、マスコミの質が問われているのかもしれない。良いものを広く知らしめるのもマスコミの責務だろう。ただ、ノーベル賞の受賞以外は科学が世間から注目されないのも事実。読んでもらえない、売れないから書かない、書かないからますます業界が縮小する。今後の科学の発展を考えると頭の痛い問題だ。
我田引水の印象が......もっと新しい刺激を
(2007-03-11)
"断続平衡説"を唱えるグールドが一般読者向けに雑誌に連載したエッセイを纏めたもの。良くも悪くもグールドの特徴が出ているが、自説に都合が良い部分を強調するのは如何なるものか。人柄は良さそうなのだが。
グールドの癖で、文章が冗漫で、かつ不必要な引用を多用するのでいつも通り読み難い内容を整理すれば次のようになるだろう。まず、19世紀初頭の科学者に託して自然にモラルを求める事の無意味さを語るが、自明の理であろう。次いで、どちらも有名なカツオドリの弟妹殺し、ハチの社会的活動が半数二倍体という性質によるものという2例を挙げて、これらは(進化上の意図した)適応では無く、いずれも現在の有用性(一族繁栄、社会性)と進化上の起源とは別問題と論じる。これらはグールドの自論の"進化の不確実性"の強調である。次いで、キュヴィエ、アガシについて論じるが、紙面のムダであろう。更にプチハイエナについてハチの時と同じ議論が繰り返される。最後はDNAのらせん構造発見で有名なクリックの論文「利己的なDNA」を出発点として、ドーキンスの「利己的遺伝子」批判に至る。ここに来て、読者はニンマリするという仕掛けだ。
雑誌でのグールドの読者はどうか不明だが、文章のくどさと我田引水的な内容で、読んでいて新しい刺激が無い。進化論の初心者向けの入門書的エッセイ。
グールドの職人芸
(2005-06-29)
グールドの進化論エッセイにハマって、『ダーウィン以来』→『パンダの親指』→本書『ニワトリの歯』と立て続けに読んだが、さすがにチョット飽きてきて本書の下巻の途中で、中断。数年間そのままになっていたのを先日たまたま見つけ、続きを読み出してみたら、久しぶりでやっぱり面白い!しかも、どのエッセイも新ネタばかりで、しかも絶妙の語り口で、グールドの職人芸を思い知った。
ただ、グールドの幅広い教養を背景にした叙述になっているので、読む側にも相応の教養がないと楽しみにくいところがある。進化論的にも基礎知識を前提として書かれているので、初心者向けではない。
読む順番としては、進化論の啓蒙書を何か一冊は読んでから、やはり『ダーウィン以来』から読むのが良いでしょうな。
個人的には進化論入門としては丘浅次郎『進化論講話』が一番のお薦めだが、現在絶版。有名な今西錦司の本は進化論としては異端でお薦めできない。
少し古いが中原英臣&佐川峻『進化論が変わる』(講談社ブルーバックス)なんかは入門書として中々良かったと思う。