本誌初の主催オーディション「Recommended Eggs発掘オーディション」を開催中ですので、まだ参加を迷っている方は要項を読んで今すぐ応募してください。(4/30締切)
今回のコラムの対象にしている読者は、オーディションを主催される立場の方々です。オーディションに参加する方々への新たな情報はありませんので、このコラムを読んだ後に出された応募書類が有利になることはないのでご安心を。
そして、募集中の現段階では私たちのオーディションが成功するかどうかはまったくわかりません。本サイトにオーディション情報を掲載希望される方々と情報を共有していくために、はじめて私たちが主催する側に立って学んだことのなかから、今回は「注目される」という視点に絞って解説したいと思います。
オーディションは誰のため?
オーディションを主催するにあたって考えなければならないことは実にたくさんあります。
基本的には、
- 誰のための何のオーディションなのか
- このオーディションを開催することによって誰が何を得るのか
これらの2点を押さえたうえで要項となる5W1Hを組み立てていけばよいでしょう。
もう少し掘り下げると、開催するに至った背景や動機がないと基本の2点とつながっていかないので、やはり企画書を書きなれていないと、コンセプトを整理することができないし、「注目される」という目的を果たせないと思います。
この2点についていちばん気をつかいたいのは「応募する人」のことでしょう。応募する人のための、応募する人が得をするオーディションでない限り、注目も成功もしません。
たとえば今回のスクランブルエッグ主催Recommended Eggs発掘オーディションの背景と動機は以下のようになります。
【背景および動機】
1994年12月に創刊し、浜崎あゆみ、椎名林檎、後藤真希、小柳ゆきらがメジャーシーンに出るはるか前に記事を掲載し、発掘した実績を持つ、芸能音楽情報誌「スクランブルエッグ」のWebサイトにおいて、特定のプロダクション、レコード会社、タレントスクールとはかかわりなく、純粋にメディアを通して推薦、応援したい人を発掘するのが目的です。創刊時から「いつかは主催オーディションを」と考えていて、Webサイト上で表紙モデル&推薦アーチストという形でRecommended Eggsが徐々に定着、評価を得ていく一方で、登場するための門が若干狭くなったので、広く募集をかけて期待ができそうな卵を自ら主催者となって発掘しようと決めました。
まあこんなまわりくどい説明は必要ないですが、スクランブルエッグのことを全然知らない人からも「応募したい」と思わせる何かがないと注目されないことはわかっていましたし、社会的認知度があまりない主催者の場合、常にそういうことを考えなければいけないのです。
いずれにせよ、主催する側の都合だけで何もかもを決めていかないように、要項作成をしていく段階で「応募する人の立場」をくみとっていくことが必要となります。そして、できれば「オーディションはイベント」というとらえ方で要項を作っていくとまとまりやすくなります。
コアコンピタンスの作り方
コアコンピタンスとは「他社に真似できない核となる能力」のことです。主催者としてはオーディションを開催するにあたってできるだけ優秀な人材に応募してもらいたいもの。そんなときにまず最初にしなければいけないのは「オーディションを目立たせる」こと、要は「マスコミに注目される」ためにコアコンピタンスを練っていく作業をしなければなりません。
主催者の種類を大きく以下の4つに分けて考えてみましょう。
- 企業、地方公共団体(もしくはそれに準ずる任意の団体)、その他イベンター
- レコード会社、映画制作会社、テレビ番組制作会社
- プロダクション
- スクール・養成所系
このなかで要項をいちばん作りやすいのは(1)です。
キャンペーンガール、イメージガールなどが中心となるでしょうが、それなりに予算があれば告知もできますし、多くの応募者やゲストを集めてイベントとしても盛り上げることができます。ただし、芸能界でブレイクしていくための橋渡しになるものがない場合、どうしてもその道のプロ(笑)、いわゆる常連さんが冠を持っていきやすくなります。
それがオーディションの背景・動機と合致していればいいのですが、そうではない場合、オーディションが多くの応募候補者や、オーディション情報を掲載するメディアの目にとまるような魅力的なエサ(副賞や合格後の待遇)をよく考えなければなりません。
このタイプはメジャーシーンでの芸能活動への橋渡しまで考えるのか、そうでないのかをはっきりさせたうえで、基本の2点を押さえて要項を作る必要があります。
(2)のレコード会社、映画、テレビ番組などは、出演やCDリリースの約束つきである場合とそうでない場合があり、約束つきならたくさんの応募が、約束なしならばそこそこの応募となります。応募する側の立場に立てば当たり前のことですね。
主催する側としては「いい素材が集まらなかったら……」という不安が常につきまといますが、「オーディションはイベント」と考え、成功させるにはやはり合格者の待遇を明示して、広く告知するのがいいでしょう。知名度はほかの主催者よりもはるかにあるわけですし、注目されることに関してそれほどエネルギーを使わなくてもいいのですから。
スクランブルエッグ主催Recommended Eggs発掘オーディションのコアコンピタンスは3つでした。
- 審査員がミスコン54冠のオーディション評論家と、オーディション取材歴10年以上のスタッフである
- 「オーディション診断シート」が応募者全員にもらえる
- 最終審査は応募者の住んでいる地域でおこない、BLUE MOON BLUEの服がもらえる
まとめると以上ですが、要項発表前にAll About Japanスーパーおすすめサイト受賞というオマケがついて、より注目される度合いが高くなりました。
プロダクション主催のオーディション
(3)のプロダクション主催というのは一長一短があり、要項を作りにくい面があります。
プロダクション主催の新人募集の長所と短所は以下です。
長所――即、仕事に結びつき、芸能界ブレイクのチャンスはたくさんある
短所――合格後の活動は本人の個性と現状に合わせたプロモーションをするため、待遇を明示しにくい
プロダクション主催の場合、「随時新人募集」という形になりがちで、問い合わせはいくつかあっても実際の応募は少ないし、応募してくる人のレベルもそれほど高くないことが予想されます。
なぜならば、応募する人のことをあまり考えた要項を作っていないからです。応募する人がプロダクションに対して一番注目しているのは、「今、芸能界で活躍しているあこがれの○○さんがいる事務所」ということです。その目玉となるタレントがいれば問題ないのですが、世の中そんなにうまくいくわけではありません。
では注目されるためにはどうするかというと、事務所のコアコンピタンスをはっきりさせたうえで背景および動機を割り出していくことしかないと思います。現実問題としては、いい子だったら誰でも取りたいに決まっているのですが、「オーディションはイベント」という考えにもとづき注目されるためには、たとえば以下のような大義名分から入っていかなければならないのです。
【モデル系プロダクションA社の新人募集の背景および動機】
1998年に創立し、レースクイーン○○を輩出しDVD発売、大きなRQタイトルももらうことができ、事務所としてようやく少し軌道に乗ってきたため、新たに将来レースクイーンとしてもつぶしがきくアイドル性を持ったタレントをオーディションで募集したい。要項には、レースクイーン○○の写真を使うが、実際に求めたいのは、テレビやCMで活動させたいマルチタレントなので、目的をあらたに明示し「今回はアイドル性の高い、グラビアも通用する13歳から18歳まで」、期間も2ヵ月間ぐらいに限定する。応募条件を満たしていない人の問い合わせにも個別に対応する(随時募集部分で吸収する扱いとなる)。不合格者への通知は必ずする。
とまあ、こんな程度にするだけでもずいぶん応募者へのアピール度は違うでしょう。不採用者への連絡をしない事務所がほとんどですので、「結果は必ず通知する」というひとことがあるだけでどれだけ違いが出るのか、一度要項をオーディション雑誌か自社のWebサイトに出して反応を確かめてみてはいかがでしょうか。
スクール、養成所系
スクール、養成所はレッスン料をもらって成り立つ仕事ですので、オーディションで特待生を選んで特待生は無料、その他は本人の希望により有料レッスンの制度があります、というのが現実だと思いますが、「オーディション」という形で要項を作るのは結構難しい問題が横たわっています。
本サイトに限らずオーディションサイト、オーディション雑誌は、審査および終了後に費用がかかるものは基本的に掲載を控える方向にあります。
応募者にお金を負担させるようなオーディションだと、合格後にももっとお金を請求されるのでは、という不安は常につきまといますし、「結局生徒募集じゃん」と思われますので、期待はされないほうがいいでしょう。
「オーディションはイベント」という考えにもとづき、あえて「オーディション」と銘打つなら学内・学外を含めた特待生募集、ぐらいのことはしないと優秀な人は集まってきませんし、プロダクションや広告代理店などと連携した発掘オーディションのようなものを考えないといけないでしょう。
本サイトでは、スクール、養成所に関してはスクール情報ページで受け付けています。スクール情報掲載のポイントは「スクール情報掲載までの流れ」にも書いてありますので、そちらも参考になさってください。
「スクランブルエッグ」が注目されたわけ
スクランブルエッグが月刊「Audition」誌に注目されたのは「オーディション診断シート」が決め手となりました。もし、ファッション誌に募集広告を打つなら「BLUE MOON BLUE」の服がもらえるモデルオーディションというところを前面に出すでしょう。
そうだ、すっかり忘れてました、こういう場合にはファッション誌の編集部に企画概要および読者へのメリットを書いたものを添えて、「よかったら取り上げてください」と送れば、取材されたうえで無料で誌面に取り上げてもらえる可能性だって十分あったのです。
オーディション雑誌をごらんになればよくおわかりだと思いますが、星の数ほどあるオーディション情報から、自分たちが主催するオーディションを目立たせるのは実に大変なことです。私たちのオーディションは運良く編集者の目に留まり、取材を受けて2分の1ページものスペースを使って紹介されたため、その告知効果としては通常(8分の1)の4倍どころか20倍以上の価値があったことでしょう。
このコラムを読んだ主催者の方がやること
私たちは通常は情報を掲載する側にいます。毎日送られてくる募集情報を掲載するにあたって主催者は何を求めているのか、を考えることがよくあります。不明な点を問い合わせて主催者のプロフィールを補足したり、編集部からのひとことコメントをつけたりして、オーディションそのものの質を高めようとしています。
また、結果報告していただいたオーディションの主催者については、「優良主催者」という形で多少差別化をしていこうと考えています。それらがほかのオーディション雑誌やオーディションサイトとの決定的な違いになり、質の高いオーディション、質の高い応募者が集まってくることが私たちの理想であり、「スクランブルエッグ」というブランド価値を高めていくために必要不可欠なことと考えています。
私たちスクランブルエッグ編集部があらかじめ優位となる点は確かにあります。掲載する側が「これ、おもしろそうじゃん」と思ってもらえる仕掛けを要項のなかに埋め込むことができたからです。
また、できるだけ多くの応募をしてもらうための発表の仕方、期間の設定、参加特典などについてスタッフと年が明ける前から十分に話し合いましたので、一応「注目される」という点ではなんとか目的を果たすことができました。
ところがまだ成功したわけではありません。
今回、主催者側に立ったことでわかった「わずらわしい地道な告知活動」も経験しました。オーディション周知のために主催者のみなさま方がどれだけ多くの時間を割いているのかも身をもって体験させていただきました。本サイトにまで告知活動を怠らない大規模オーディションの広報担当者には本当に頭の下がる思いです。
この先の話はまた別の機会にゆずりますが、今回のコラムのまとめとして、注目されるオーディション要項の作り方の要点を繰り返すことで終わりとさせていただきます。
- 開催に至る背景と動機をはっきりさせる
- 応募する人が得をする要項を作る
- 「オーディションはイベントである」という考え方でマスコミに注目される要項を作る
- 地道な告知活動
今後の要項作成にどうぞお役立てください。
【満足度】4
【コメント】なるほどと、関心もし、また、そうそう、それそれ!と忘れてたのいう内容もあり、勉強になりました。
【ペンネーム】ひぃ