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AKB48物語「ブレイクへの手応え」

written by 岡田隆志

  Last Updated: 2009/04/24
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2009年3月4日、AKB48はキングレコード移籍後2枚目のシングル『10年桜』をリリースしました。

『10年桜』とAKBアイドリング!!!のヒット

『10年桜』はオリコンウィークリーチャート初登場3位、累計10万枚を超えるヒットとなり、これで一般の若者にもAKB48がアイドルとして認知されてきたのではないでしょうか。

相対的に他のグループアイドルが失速してしまったこともありますが、地上波での冠レギュラー番組『AKBINGO!』の高視聴率化、名古屋での放送開始なども重なって、思っている以上にファン層の裾野は広がっているようです。

ファン層が広がったのを一番実感できたのが後楽園・ラクーアで行われた『10年桜』ミニライブ&握手会でした。AKB48劇場で見慣れている年齢の客層とはだいぶ違い、驚くほど若く、メンバーへの反応がいわゆる“ヲタ”じゃなく、一般人のもので、その光景こそがデビューしたときに思い描いていたひとつだったはずですので、感慨もひとしおです。

そして4月1日にはアイドリング!!!とのコラボユニット“AKBアイドリング!!!”が『チューしようぜ!』(ポニーキャニオン)をリリース。こちらも売り上げ好調で、オリコンウィークリーランキング2位になり、購入者特典招待ライブでは女性客も思った以上に参加していて客層の広がりを実感することができました。

そして麻生首相主催の「桜を見る会」に招待されたり、テレビ東京「世界卓球2009」の応援をしたりと、AKB48として4年目の桜は七分咲きから満開に近い状態になってきました。

チームの現状を見る

表舞台は華々しい展開になってきていますが、メンバーの卒業による入れ替え、ソロ活動、ユニット活動など、めまぐるしい変化が起き、劇場公演の内容やチーム結束にどこかぎくしゃくしている点は生まれてきていないとも限りません。

2008年2月から2009年4月24日までのチームのメンバー変動を簡単に振り返ってみましょう。

[チームA卒業]
大江朝美
駒谷仁美
戸島花
中西里菜
成田梨紗
川崎希(4/26で卒業)
大島麻衣(4/26で卒業)

[チームA入り]
藤江れいな
佐藤亜美菜
宮崎美穂
北原里英
中田ちさと
高城亜樹

[チームK卒業]
早野薫(4/26で卒業)
[チームK入り]
倉持明日香
成瀬理沙
近野莉菜
[チームB卒業]
井上奈瑠
野口玲菜
松岡由紀
早乙女美樹(研究生に降格→卒業)
菊地彩香(解雇→後に研究生入り)
[チームB入り]
佐伯美香
指原莉乃
仁藤萌乃
小原春香
中塚智実

これを見ればお分かりのとおり、チームAとチームBはこの1年間に大きく入れ替わってしまいました。以前から見てきたファンにとってはお気に入りのメンバーが卒業していくのは残念な側面もありますが、昨年のチームAが5人同時に卒業したことでファン側も気持ちの整理がついたような感じもします。

チームAは初期メンバーは大手プロダクションに所属していることで一段とプロ意識が高まり、追加メンバーはフレッシュさとひたむきさで劇場に駆けつけるファンの人気を支えるという、多少いびつな図式ではありますが、形にはなっているようです。

チームKはメンバーの何人かが卒業する噂がささやかれたりしましたが、『最終ベルが鳴る』公演最終日までメンバーの大きな変動がなく、チームとしての団結を保てている状況が続いています。

チームBはメンバーの抜け方があまり後味の良いものではなかったせいもあり、チームとしては若干の失速感は否めない状況にあるのかもしれません。それは後ほど詳しく述べることにします。

チームK 5th『逆上がり』公演

2009年4月11日、チームKは5th Stage『逆上がり』公演をスタートさせました。

チームBと同じく、前回のステージの楽日から1週間で仕上げなければならなく、体調やスケジュールの関係で、チームBと比べると決して万全とはいえない形でスタートすることになりました。

まだご覧になってない方も多数いると思いますし、セットリストの評価についてはいろいろな意見が出はじめているころだと思います。週末に行われるNHKホールでも何曲かは見られるかと思いますので、それを見て判断いただくとして、一応、個人的な感想を残しておこうかと思います。

ファーストインプレッションについてはブログで述べたとおりですが、そのときには書かなかった重大なことを(笑)。

私が考えるに今回の『逆上がり』公演は、SKE48チームS『手をつなぎながら』公演のチームK的、秋葉原的展開なのではないかと思います。

チームS『手をつなぎながら』が名古屋でしかできない公演とすれば、『逆上がり』は今の時代の東京・秋葉原を舞台にAKB48のチームKにしかできない公演だと言えるような気がします。

それはオープニングの寸劇から始まり、ユニット曲のダンス重視の楽曲、2000年前後のリズム、ソロのロッカバラードなど、バラエティに富んだ内容であり、それまでのチームKが持っていた“コンプレックス”からようやく脱した感があります。

ここでいうコンプレックスとはチームKの約4ヵ月前にスタートしたチームAが持つ“華やかさ”の部分が足りないことを差して使いましたが、確かにチームKは体育会系だ、根性と努力と団結力で勝負だ、転がる石になったり花と散ったりしなきゃいけなかったのかもしれませんが、それだけをバネにして頑張らなきゃいけないのかといえばそうではないと思います。

今回の『逆上がり』公演のひとつの大きな転換点は、転がる石の上にも三年、汗が染み込んだ泥臭い運動着のイメージを脱却し、チームKでもこんな面を出せるんだというアピールが十分できているように感じます。

特にユニット曲の編成についても、それまでは中心的メンバーしか目立っていなかったセットリストが今回はほぼすべての人にスポットライトが当たるように工夫されていて、昔から彼女たちを知っている人にとっては、見ていてとても晴れやかな気分になれます。

『脳内パラダイス』公演でも見せてくれた、洗練されたダンスビートやストレートなロック調の楽曲は、今やチームAにもチームBにもできない、チームKのメンバーだからこそできるナンバーが含まれていることがお気に入りにさせる原因とも言えます。

ダンス面ではかなり揃っていない点があり、それを意識してもらって修正しつつ、それぞれのユニット曲の完成度を上げていってもらえば、最初の寸劇から最後の「To be continued」までが一つのパッケージとして完成していけるでしょう。

『最終ベルが鳴る』公演の最終日の最後に「草原の奇跡」をみんなで歌いましたが、今度は「To be continued」が新しいチームKを代表するような曲になってメンバーやファンの心の中に浸透していってくれることを心から願っています。

チームB『アイドルの夜明け』公演の感想

今月になってチームBとチーム研究生『アイドルの夜明け』公演を立て続けに見させていただく機会がありましたので、そのときの感想も残しておきたいと思います。

チームBの『アイドルの夜明け』公演を2月に見たときに次のことを感じました。

「このセットリストは現在のチームBにあまりにピタっと合わせた感じがして、伸びしろが少ないバージョンではないか。洋服で言うと、今はぴったり合った服だけど、もし中身の人間が成長したらその服を破っていかなければならない。果たしてそれができるのだろうか」

というものです。このセットリストを通してメンバーが成長するためには、相当の覚悟が必要なのではないかと思いました。時期的なことでいえばチームA 3rd『誰かのために』のように、曲が出来上がりすぎて成長しづらいというか、劇場での毎日の変化がわかりづらいバージョンのように感じます。

4月になってもう一度見ましたが、セットリストに対する印象はそれほど変わるものではありませんでした。

ただ、ユニット曲では向上心を持っているメンバーについては確実に成長できていることが伝わってきたので、少しホッとしました。ただ、セットリストがよく出来ているだけに、多少手を抜かれても公演ごとに差が見えづらいのが逆に本人たちの成長を妨げてしまっているのではないかと思います。

見る人が見れば、メンバーによって「公演に対する意識の差」は結構あって、結局、それがどの日であろうが意識を高く持っていないとダメじゃないかと思うわけです。特に事務所に所属していない人は、いつどこで見られてスカウトされるかわからないのですから手を抜けないし、逆な言い方をすればチャンスなわけです。

チームBは構成メンバーの変遷や事務所分布などの面で他のチームと違う動きになってしまったとはいえ、いつまでも“甘えん坊の末っ子”でいいのか、メンバー自身に考えてもらいたいくらいです。本当なら高橋みなみ、秋元才加のような精神的支柱の役を誰かが自然に引き受けるべきなんでしょうが、そうなっていないところが今のチームBの“弱み”といえるのではないでしょうか。

とにかく自分に与えられた服を破り捨てて成長する覚悟を持って実践していってほしいです。

チーム研究生『アイドルの夜明け』公演

チーム研究生はチームB『アイドルの夜明け』公演の1曲目(生楽器演奏がある)を除いたセットリストとなっています。

2008年5月22日に行われたときに初の研究生公演と比べると、新鮮さ、真剣さの面で若干の物足りなさを感じました。1年前の研究生公演からは後にチーム入りしたメンバーも多くいるので、1年前は内容があった公演だったのかもしれません。

現在のチーム研究生は研究生内でさらにオーディションがあって残ったメンバーですので、スキル的には高レベルな研究生もたくさんいるのですが、1年前見たときのような「見ててわくわくどきどきする」感情がわいてきませんでした。

それが「ひたむきさ」の欠如なのか、知った顔のメンバーが多いからなのかわからないですが、ひとつは背が高い子が多かったり、ルックス的に好みの子が少ないという個人的な感想は持ちました。

チームBのところで述べたように『アイドルの夜明け』のセットリストはチームBに最適化されたものなので、研究生がそれを演じると、とても不釣合いな感じがしました。特にユニット曲についてはスキル不足が目につき、かなり厳しい印象を持ちました。

全体曲については、“慣れ”がない分、一生懸命にやらなければならないため、チームBよりも“ひたむきさ”は伝わる瞬間はあったように思います。……というぐらいしか言えない状況です。

技術的な部分で成長できる余地はたくさん残ってはいるものの、このセットリストで技術的に成長しても個性をアピールするのはそんなに簡単なことではないので、結局は「存在感」「オーラ」の勝負になってしまうのではないかと。

前田亜美が持っている存在感

ただひとつだけ明るいことがあります。

前田亜美です。

彼女の持っている存在感はただごとではありません。劇場の壁の写真ではわからなかったのですが、チーム研究生公演の中でただ一人、とびきりのオーラを放っています。

彼女の出すオーラたるや、チームBのメンバー3人分ぐらいの価値があると個人的には感じました。最初のチームK公演で一人異彩を放っていた秋元才加ぐらいの存在感があるように思います。

アイドル好きな方は(あえて名前を出しませんがおわかりのとおり)もう一人の人気メンバーを推したいかもしれませんが、業界人的な発想で今より将来のことを考えるとき、今までにいないタイプをと考えると、やはり前田亜美はすごい!としかいいようがありません。国民的美少女コンテストでも入賞できるオーラと存在感とルックスを持っているので、大切に育てていただきたいものです。

SKE48はもうすぐそこまで近づいている

SKE48の変化も確認しておきたかったため、初日ゲネプロ以来、久々にSKE48 チームS『手をつなぎながら』公演を見てきました(4月19日)。(ただいま公演フォトレポート順次公開中です)

前回のコラムでもその興奮と感動を長く書きましたが、やはりその第一印象のまま、今回も興奮と感動につつまれました。

なぜあんなに全員がパワー全開で踊れるのか! なぜ誰もが一切手抜きをしないでひたむきに動き続けられるのか! なぜ名古屋にできて秋葉原にできないのか、と逆に問いたくなるくらいです(苦笑)。

それは若いからだけではないでしょう。夢に向かってまっすぐ前を向いているからだと思います。

AKB48の歴史の中にもそういう時期は確かにあり、歴史は繰り返されるものなら、その先には……といろんな想いがよぎりますが、たぶん秋葉原とは違う展開になっていくように感じます。

それは名古屋という、東京でも大阪でも福岡でも札幌でもない土地柄にあると思うのです。私自身、愛知県出身ということもあり、地元出身者の立場で言いますと、東京で生まれ育った子と地方で生まれ育った子にはいろいろな違いがあります。

名古屋ならではの土地柄と気質

東京と比べて名古屋の気質を箇条書きするならば、
(1) 目立ちすぎてはいけない
(2) 意外に粘り強い(堅実)
(3) 見栄を張るときにはドーンと張る
といった特徴が挙げられるでしょう。

(1)は名古屋に限ったことではありませんが、目立つといじめの対象になってしまうため、基本的に目立った行動はしません。東京なら転校したりすればいいかもしれませんが、地方では地域内のつながりも多いため、あまり派手にはできないのです。

(2)は名古屋的といえばそうなのかもしれません。わりと住みやすい地域なので、無理をして上京しなくてもそこそこ満足できるので、大穴一発狙いよりは堅実な本命を狙う傾向にあります。

(3)は結婚時に嫁入り道具を周囲に見せて運んだり、お菓子をばらまいたりするところなどのシーンをテレビなどで見たことがあると思います。

SKE48のメンバーが将来、どういう形でブレイクしていくのかというのはまだ正直、予測がつかないですが、名古屋の特質を考えると、誰か一人か二人が東京のプロダクションに引き抜かれて、名古屋ではSKE48メンバーとして、東京ではタレントとして活動していくというのは今の時点ではまだ難しいように感じます。

そういうことをするよりは、着実に名古屋でNo.1のアイドルになったうえで、卒業後に全国を視野に入れながらのソロ活動をしていくほうがいいでしょう。

また、卒業の形も東京とは違うように感じます。地元で自分なりに一生懸命やったんだから自分なりのふんぎりも早くつき、卒業後、次のステップにすぐ行きやすいように感じます。それは東京とは住む文化が違いますし、芸能活動に対する感覚も違うからです。

ですから「手をつなぎながら」というのは、ある意味、SKE48に、名古屋の風土に最も合っているのかもしれません。

誰か一人が東京で勝ち負けできるほど目立つまでには時間がかかるかもしれないですが、チームSのようなひたむきさ、真剣さ、一体感は秋葉原では見られなくなりつつあるのが現状です。

AKB48が好きで、AKB48をもっと良くしていきたいと思っているのなら、本当なら関係者もメンバーもファンも、東京ではなく名古屋の劇場でSKE48を見て、そのすごさに一度打ちのめされてほしいくらいです(笑)。『手をつなぎながら』公演はAKB48を見つめなおすとても優れた見本だと思うので、忙しいとは思いますがまだ一度も見ていない方はぜひ足をお運びください。

ただ、今回の成功例は名古屋だけに言えることかもしれません。博多だと中央志向が強く、目立ちたがりの負けず嫌いが集まる可能性もありますので、今後のJPN48(?)展開にあたってはその地方の特性を十分把握した人がコーディネートする必要が出てくるでしょう。

今後の展開

4月25日、26日にNHKホールでコンサート『「神公演予定」* 諸般の事情により、神公演にならない場合もありますので、ご了承ください。』が行われます。

メンバーの卒業だけでなく、今後の展開についてもかなりたくさんのことが発信されることでしょう。

結成4年目となる今年はいよいよ本格的ブレイクに向けていろんな仕掛けをしていく時期です。裾野となるファン層が着実に広がっている今、人気を確実にするために初心を忘れずに質、意識が高いものをこれからも送り出し続けていただけたらと感じています。

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