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AKB48物語「アイドルの政権交代」

written by 岡田隆志

  Last Updated: 2009/12/02
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AKB48メンバー新組閣

2009年8月22日、23日、AKB48は日本武道館で公演を行いました。

日曜の2回の公演を見ましたが、この広いホールにファンが埋め尽くされているのを見るのは壮観な風景でした。地道に公演を続けてきた成果がこのような結果につながったといえるでしょう。

前回のコラムの最後で述べた東京パフォーマンスドールと比べてどのような感想を持ったかについてですが、当時(TPD)は「本当に武道館なんて夢のまた夢だったのに……広いなぁ」と感慨無量だったのに対し、今回(AKB48)は、「来るところまで来ちゃったんだなぁ……まだこれは通過点なんだろうな」と思いました。

「グループアイドルは歴史が繰り返される」法則がある程度正しいとすれば、AKB48が武道館公演をすることはそれほど非現実的なものでないことは、実は始まった当初から私にはわかっていました。当事者、関係者、ファンの熱意と体力(財力?)さえ続けば日本武道館で公演することは可能だと思いましたので、紆余曲折あったにせよ、わりと順調なタイミングで公演を迎えられたように思います。

そして、23日の夜の公演の最後に新チーム体制の組み分け発表が行われました武道館公演記者会見記事の最後を参照)

この組み分けについての見解はブログ(AKB104 選抜メンバー組閣祭り 内閣改造所見「AKB104 選抜メンバー組閣祭り」人事異動所感(2))で述べたとおりですが、組織(この場合は各チーム)としての蓄積疲労と、新興勢力(この場合はSKE48)の台頭によって、現在のままではより大きな発展がしづらいために、大きく人事を刷新して組織全体の活性化を計ろうとした、いわゆる「(企業内の)人事異動」と考えるのが最も落ち着くのではないでしょうか。

それまでのチームの良さがあることはわかっていつつも、そのままA、K、Bが同じメンバーで続けていき、研究生からメンバーを昇格させていっても、研究生は既存のチームカラーに飲み込まれてしまうばかりです。

居心地の良さを感じている現メンバーは変化・成長していくことに消極的になりがちです。放っておいたら1年先にはSKE48(SはもちろんのことKIIでさえも)が劇場パフォーマンス的にはチームA、K、Bを抜き去ってしまう勢いでしたので、異論はあったでしょうが、良い判断だったのではないかと個人的には評価しています。

ファンの増大

2009年はAKB48にとって本当にいろんなことがありました。シングルの発売記念握手会イベントを取材していてわかるのは、確実にファンが増えていて、10代や20代前半のファンが圧倒的に増大したことでしょう。

『10年桜』のラクーア、『涙サプライズ』『言い訳Maybe』のよみうりランド、サルオバサン祭り、『RIVER』の握手会(8,000人動員)を見ていると、本当に若いファンが増えたことを実感できます。

支持層も、「地下アイドル好きヲタ」から「AKB48オンリーなアイドルヲタ」「メジャーなグループアイドルのファンから流れてきたアイドルファン」へ、そして女子高生、ふつうの高校生、大学生へと広がってきているのがわかります。

現状のAKB48人気は「アイドル市場」の枠をすでに超えて、アイドルに興味がある一般的な若い人にまで広がってきていますので、ここからの舵取りはかなり難しくなってくるでしょう。

『RIVER』以降の世間の評価

2009年10月21日、AKB48は14th シングル『RIVER』をリリースしました。

それまでのシングル路線とは少し趣きを変え、曲調も冒険的ですし、できるだけ多くのメンバーを参加させようと3曲をPV付きで入れた意欲作でした。

その結果、初のオリコンウィークリーチャート1位になったばかりでなく、2009年女性アーティスト初動売上枚数1位にもなり、その熱狂的な人気の渦が数字になって現れてきました。

私はメディアの側にいるのでよく分かりますが、マスコミは「今、AKB48を取り上げれば数字が取れる」とわかり、こぞって取材・出演依頼をしているようです。見ている側とすれば多少、食傷気味ではあるのですが、立ち上げ時から取材している立場とすれば、うれしい反面、多少の戸惑いがあるのも事実です。

半年先ぐらいまでは今のような「熱狂の渦」が続くであろうことは想像に難くありません。それは「ブレイクした証」でもあるのです。当事者が望んでいようがいまいが、今の激流(ブーム)に飲み込まれないように流れにうまく乗っていくしかないのです。

その激流の変化を端的に表すのが雑誌の表紙登場回数、テレビ番組の出演回数となるでしょう。当サイトでもAKB48の検索数やAKB48関連記事のページビューの多さは半年前と比べるとはるかに多くなっています。

もうひとつの指標はテレビ番組のイベントキャンペーンキャラクターや、企業のイメージキャラクターとしての起用でしょう。この流れには誰も逆らうことができないです。

紅白出場とアイドルの政権交代

そして11月23日、AKB48の2度目のNHK紅白歌合戦出場決定が発表されました。

出場は確実視されている向きもありましたが、ふたを開けてみないと分からないのが紅白。10年連続出場後、昨年は出場できなかったモーニング娘。が2年連続出場を逃したことで、いわゆる「アイドルの政権交代」が誰の目にも分かる形になってしまいました。

いわゆる“ヲタ”と呼ばれるアイドルファンにとってはこの流れは誰にも変えられないことは知っていつつも、こういうはっきりと目に見える形で新旧交代が行われるのはある意味残酷な気がします。

2003年に出したコラム本『スクランブルエッグのコラムを持って街に出よう』に「なぜ編集長はハロプロのコラムを書かないのか」という未発表コラムが載っているのですが、その中でもなぜハロプロに興味が持てないのかはよく分からないままでした。

今考えると「(ハロー!プロジェクトの)コンセプトが自分に刺さらなかった」ということに尽きると思うのですが、私にとってハロプロは一貫してわくわくするものが少なかったように思います。

私は今、ハロプロを否定するつもりで書いたわけではありません。「逆もまた真なり」で、ハロプロやモー娘。のファンがAKB48プロジェクトに刺さらないことも十分考えられるわけであって、時代が変わったからといって個々人が態度を変えようが変えまいが時代は確実に変わっていくということなんだな、と思ったまでのことなんです。

グループアイドルとしての先頭走者になってしまったAKB48ですが、失速せずにいつまで先頭を走っていけるのか、というのは当面の注目の的となりそうです。

そしてこの現象がさらにどのような「ブーム」を引き起こしていくのかについては、古参のファンではなく、中高生や、AKB48のことをまだよく知らない一般の人が握っているような気がします。

SKE48 3rd Stage『制服の芽』公演がスタート

2009年10月25日、SKE48チームSは『PARTYが始まるよ』『手をつなぎながら』に続く3rd Stage『制服の芽』公演をスタートさせました。

前回の『手をつなぎながら』のセットリストがあまりに強烈な印象を各方面に与えたので、期待をあまりふくらませすぎないようにして見たものの、期待を裏切ることはなく、ほっとしました。

A 5th初日 2008年10月19日
B 4th初日 2009年2月8日
S 2nd初日 2009年2月14日
K 5th初日 2009年4月11日
KII 1st初日 2009年6月13日

上記のリストを見ていただければお分かりかと思いますが、チームA、チームBよりも先にSのセットリストが公開されていて、SKE48は今、劇場公演に力を入れなければならない時期であるとも言えましょう。AKB48が劇場をおろそかにしているというわけではなく、今年のAKB48はめまぐるしい展開の中でいろんなオファーに対応していかなければならない時期だといえましょう。

SKE48チームSは着実にチーム力をつけていて、今回の『制服の芽』公演は今までにない振り付けの激しさ、そしてSDN48で試してきた高低差のある振り付け、2nd公演よりは身の丈に合った歌詞、そしてもはや「SKE48らしさ」とも言っていいような多少ノスタルジックな曲調が並んでいて、見ていて楽しくなりますし、正直何度も足を運んで成長ぶりを確認したくなるような公演です。

まだ見たことのない方はぜひ一度足を運んでみてください。12月5日からは「SKE48学園(#3)」(エンタ!371)初回放送、12月6日にはチームK 2nd公演『手をつなぎながら』、12月25日にはコンサート『名古屋一揆』とSKE48の動きにも目が離せない状況です。

「AKB歌劇団」に見るメンバーの成長

2009年も残すところあと1ヵ月となりました。12月8日には公演4周年を迎えます。AKB48をとりまく状況は日々刻々と進化していています。

10月30日から11月8日まで行われた「AKB歌劇団」のミュージカルは好評のうちに終えることができました。そして11月には佐藤亜美菜さんがミュージカル『フットルース』で立派にアーリーン役を務めました。

大所帯になってきたAKB48ですが、光が当たりにくい部分もかなり存在します。このミュージカルに出演したメインキャストだけでなく、たとえば岩佐美咲の堂々とした演技、佐藤亜美菜のミュージカル女優としての基礎的能力、先日イベントがあった「リトルミスマッチ」の奥真奈美のモデルとしての潜在能力、SKE48のSアンダーで登場したKII石田安奈のダンスセンスなど、AKB48がメジャーになったことでそれまで光の当たりにくかったメンバーにもチャンスが増えてきたことを見逃すわけにはいきません。

マスメディアに出てくるのはある程度固定された、名前が知られたメンバーが多くなるのは仕方ないにせよ、2番手、3番手に位置するメンバーの活躍の場所が広がってきたことをファンの方はよく見てあげるべきでしょう。

シングル『RIVER』の抽選特典特別公演「AKB48総会~AKBはどこへ行く」で秋元康プロデューサーはAKB48のメンバーのことを「マラソン」にたとえていましたが、いろんなところを走っているメンバーをいろんな角度から見ることは確かに必要でしょう。そのためには先頭ランナーには頑張って走ってもらわなければならないし、2番手グループ、3番手グループも前を見て走っていれば、チャンスが回ってくることを知るべきでしょう。

「AKBはどこへ行く」

私が約4年間、AKB48と付き合ってこられたのにはいくつかの理由があるのですが、今年になってマスコミにも注目され、売れてきてメジャーになってきたにもかかわらず、「総選挙」「サルオバサン祭り」「大運動会」「AKB総会」など、AKB48プロジェクトの原点ともいえる「何が起こるかわからない」楽しさを今も維持していることはアイドル史上、特筆すべきことではないかと思います。

売れていくにつれてスタッフも変わり、それまで付き合ってきた関係を遠ざけて別のステージ(段階)へ、という芸能プロダクションによくある「転向」も今のところないように見受けられます。

今はそうでも将来どうなっていくかについてはわからず、もちろんうちの媒体もいつか相手にされなくなるのかもしれませんが(苦笑)、先日の「AKB総会」での秋元プロデューサーの言葉を聞いている限りは、今のところその心配はあまりしなくてもよさそうな感触を得ることができました。

2015年12月8日の公演が実現し、そこにメンバーもスタッフも当初からずっと応援しつづけてくれているファンも、そしてその輪の中に私もいさせていただいていることの現実味を少し感じられるようになりました。そのためにも媒体としていろんな形で多くの人の役に立っていかなければならないと思いました。

浮き足立たないことが大切

いわゆる「政権交代」が起きても浮き足立っているメンバーはほとんどいないように私には思います。少なくとも主力メンバーには“天狗”になっている様子は感じられません。

心配なのはまだ光が当たらない研究生や昇格組が、同級生たちに見栄を張ったりしていないかとか、これからメンバーになる候補者が「AKB48のメンバーになること」そのものが目標になっていかないかが心配です。

そうなる気持ちもわからないではないですが、立ち上げ時に近い時期から関わってきているメンバーたちはAKB48がいくらメジャーになったからといって浮き足立つことは正直ありません。

それはマスコミも同じで、最初のほうから関わってきていればAKB48の進むべき方向性がおかしくなればそれについて指摘もできるのですが、人気が出てきてから関わってきていると、どうしても人気に便乗した形になってしまいがちで、誰がどのように努力してきたかを理解しようとしないままAKB48と関係性を持とうと近づいてくる人もいるはずです。その見きわめは結構大切なことのように思います。

私がこのように偉そうなことを言える立場ではないのは百も承知ですが、AKB48はこれからも今までの慣習・鉄則にとらわれないで「次はどうなっていくんだろう」とわくわくしながら見たり関わったりするアイドルであってほしい、というのが今の私の偽りのない気持ちです。

そうあるべきために何を変えていって、何を変えちゃいけないのか、と考えるのはとても意義あることのように思います。そのひとつはメンバーが成長できる場としての劇場公演を大切にしていくこと、これだけは死守していただきたいと思っている次第です。

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